防音の考え方と効果

 住宅の生活防音でも、楽器の防音室でも、質量則のみの考え方で遮音材にシフトした設計・対策を行うと、落とし穴にはまります。

 例えば、面密度約2kg/m2の遮音シート(厚さ約1.2ミリ)を、壁に3重張りすると、厚さ3ミリ・面密度6kg/m2の遮音マットと同等の防音効果が得られると思うでしょう。

 面密度が同じでも、実際は遮音シートを3重張りしたケースが遮音マット1重張りよりも防音性能が劣ることが少なくありません。質量則の考え方だけで捉えれば、防音効果は同等なはずです。

 なぜ、このような現象が起きるのでしょうか。それは、遮音シートの制振性不足や素材の性質の違いから性能に差が生じたと考えられます。音響学会の実験データでも面密度や制振性の乏しい素材を重ねても効果が高まらないことが検証されています。

 防音の効果は、使用する防音材の性能・性質や、下地、吸音素材などを含めた、組合わせ方・構造的な補強などの複合的な要因によって、大きな差が生じるのです。ここに、質量則のみに基づいた遮音材にシフトした防音の限界があるのです。

 また、防音は「遮音」「制振(防振)」「吸音」の要素に加えて、下地構造などの耐久性・剛性が大きな影響を与えます。地震や楽器・設備などによる振動対策、長期の荷重に対策する耐久性は、防音室であっても住宅であっても重要です。

 防音材の選択一つをとっても、効果に差が出ることに留意すべきでしょう。防音の考え方・経験が専門業者のノウハウであり、生命線です。

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