防音効果のポイント

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 効果を高める最大のポイントは、「遮音」「制振(防振)」「吸音」の3つの機能を状況に応じて適切に複合化することです。音の種類(固体音・空気音)を見極め、周波数特性(主成分)や伝播経路を把握することが大切です。

 マンションなど住宅では、必要以上に空間を狭くするような対策は不向きです。出来る限り、薄くてコンパクトな防音が求められます。過大な重量の構造は問題となるため、比較的軽量な防音構造が必要です。

多層構造による防音性能
 通常のマンションの外壁は150~180ミリの躯体があり、モルタル・タイル及び内装のボードなどを含めると総厚約235ミリあります。躯体だけでもD-50あり、外壁仕上げと内装ボードの単独の遮音性能を足し算するとD-70(500Hzにおいて70dB以上の音の遮断性能)があるはずです。

 ところが、実際は、D-45程度しかない場合もあり、D-50を上回るのも容易ではないのです。それはGL工法・内断熱工法を採用していることと、単純な質量則が成立しないためです。遮音欠損やコインシデンスなど構造的な問題や部材の特性(弱点)が悪影響を及ぼすため相乗効果が出ないのです。

 一方、木造住宅では通常は、外壁は外装・内装を含めて、総厚約145ミリ程度しかなく、D-20~25程度の遮音性能しかありません。しかし、これに防音対策による内装壁を構築するとD-60程度の防音性を発揮させることが可能になります。内装壁は85ミリ程度で十分です。外壁の重量はマンションよりも軽量になります。単純な質量則を超えた防音の相乗効果を、防音設計による多層構造で実現できるのです。これが我々「防音職人」の技術です。

 この多層構造は、周波数特性や素材性質を勘案した「遮音・制振・吸音」による防音構造であり、木造住宅でも適用可能です。音のエネルギーを効率よく熱エネルギーに変えて吸収し、減衰させることが最大のポイントです。

防音効果を損なうやり方】
 防音素材には、周波数特性があります。コインシデンス効果というある周波数で、透過損失のグラフを見ると谷間のようなイレギュラーが起き、遮音低下が起きる現象です。

 通常は石膏ボードに重ねて防音材を施工したり、一体的に加工した製品を工事で使用するのが一般的ですが、工法や防音材選定によって、この遮音低下が起きるリスクが大きくなることが分かっています。

 例えば、振動騒音を抑えるのに、堅い振動しやすい下地や遮音材ばかり重ねても効果が出ないだけでなく、固有振動周波数に一致して共振さえ発生して、余計に騒音が酷くなることもあります。その典型例がGL壁に鉛の遮音パネルなどを重ねて施工することです。
 また、分厚い防振ゴムも共振する周波数があり万能ではありません。逆効果になる周波数も発生することがあり、劣化して性能が低下することも含めて、注意が必要です。

コインシデンス効果・遮音低下回避の工夫
 遮音材だけでなく、吸音材においてもコインシデンスのような複数の周波数帯における吸音性能低下が起きる素材があります。遮音材は空気音だけでなく、固体音についてもコインシデンス効果のような、特定の周波数における遮音低下が起きることがあります。
 これらのリスクを回避するとともに、防音性を総合的に向上させる対策として、特性の異なる防音材・下地材の複層化が有効です。野球で言えば守備範囲を広くするような効果が期待できます。

【吸音材の吸音率について(補足)】
 ダイジェストページで、詳しく記述すると分かりにくくなるかもしれませんが、防音材の中で最も分析が難しいのが吸音材です。
 従来の防音では背後の空気層が重要であると設計マニュアルにも記載されていると思いますが、実際は低い周波数においては、数センチ~30センチ程度の空気層は音の減衰効果が殆どなく、むしろ空気音の共振を招いて防音効果の低下など悪影響をもたらすケースがあります。

 ですから、吸音材の吸音率を読むには、周波数ごとに、背後の空気層がない場合のデータを見る必要があります。厚さ・密度および素材の種類ごとに比較することが重要です。